童話 1 「赤い実の花」   あらまりこ

投稿日:2021年05月04日

ある日 たんぽぽ村に 風の精が

一粒の みかけない種を運んできて

そこに 小さな可愛い花が咲きました。

このあたりでは めずらしい花でした。

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花は まわりの景色になじめなくて、

ちょっぴり不安な気分でした。

そこに 働き者の虫さんが飛んできて

このあたりのことを 優しく教えてくれました。

花は いっぺんで 虫さんに恋をしました。

「あなたのおかげで 私は実をつけることができます」

虫さんも 嬉しくなって 言いました

「君はとっても 甘い蜜をくれる花だね。

ぼくは 君の役に立ってるの? 僕で

できることがあったら なんでもしてあげたい。なんて、愛しい花なんだ」

 

恋する二人に 光の精がロマンチックな

優しい光でまわりをキラキラ輝かせて

見せてくれました。

樹々の葉も みんな二人を羨ましがって

揺れているみたいでした。

二人にとって、楽しい日々の始まりです!

今日も 働き者の虫さんは

美味しい蜜を探して歩き廻ります

花は 心配でなりません

「あなた、私を置いて どこへ行くの?

私は 歩き回れない・・・・ここで じっと、あなたがくるのを待ってるだけ」

虫さんは 大急ぎで 花さんのところへ

戻りました

「僕が本当に好きな花は 君だけだよ」

花は、又、しあわせになりました

 

 

ところが 翌朝 目を覚ました時 しあわせが いなくなっていました

「意地悪な 風が 盗んでいったんだわ」花は かなしくなりました

「私の虫さんを さらったのは誰?」

とうとう花は 悲しみを通り越して怒り出し

そして すごいトゲが 身体中に生えてきました。

何も知らずに通り過ぎる小さな生き物や 帰ってきた虫さんを 容赦なく

傷つけてしまいました。

 

風の精も こわがって 花をよけて通りました。

光の精も 花と目を合わさないように

目をつぶってしまいました。

 

樹々の葉も びっくりしてザワザワ騒ぎました。

花は 真っ暗な闇に ポツンと 取り残されました。

 

すっかり、元気をなくした虫さんが 泣きそうな声で やっと 言いました。

「お腹がすいて 死にそうです。君は

たしかに最初、美味しい蜜をくれたけど

もう、蜜をつくってくれなくなって、近づくと

僕の身体をボロボロにする」

 

泣きながら 花も言いました

「どうして わかってくれないの?あなたが

よその花のところへ 蜜をもらいに行って

その花と 恋をするのではないかと思うと

心配で気が狂いそうになり 蜜なんか

つくってることが 出来なくなるのよ!」

まっくらな闇の中で、みんなが二人を

無視しているような、虫さんも 花さんも

居場所がなくなった気がしてきました

「光の精が 目をつぶってるから

いつまでも まっくらで怖いんだ」

それを 見かねた たんぽぽ村の白髪頭の たんぽぽおばあちゃんがいいました

「自分が変れば楽しいのに。みんなの

力を借りて みんなで仲良くすればカンタンなのに」そう言うと、おばあちゃんの

髪は見る間に 綿毛となり 優しい風に

のってふわふわ気ままな旅をはじめました。

「気に入った場所をみつけて、又どんどん

世界をひろげるのよ」たんぽぽのおばあちゃんは また、赤ちゃんからやり直すの

だそうです

 

「そんなこと、私にもできるのだろうか?」

「私は 綿毛に変身できない・・・・」

花は絶望して 枯れそうになりました

「もう、こんな古い花びらはいらない・・・」

大事にしていた 色褪せた花びらを捨てると かわいい実が出来ました。

小鳥が飛んできて 実をくわえました

「なんて、おいしい実なんだろう 子供たちにも持っていってあげよう」

赤い実に変身した花は 小鳥と一緒に

空を とびました

「私って そんなに美味しい実だったの?」なんだかうれしくなって わくわくしました。

小鳥は お礼に タネは食べずに、ふかふかの土のベッドに寝かしてくれました。

風があたたかい ふとんを

かけてくれました。木々の葉が おいしい

しずくを落としてくれました。

光が サンサンと ふりそそぎました

虫さんも 心配そうに 時々様子を見に来ました・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、たんぽぽ村にね、

とっても、おいしい赤い実をつける、しあわせのお花が いっぱ~い咲いてね、

たんぽぽ村が すっかり、にぎやかに

楽しくなったんだよ。

虫さんもね

今日も 朝から せっせと 忙しそうに

楽しそうに とびまわってるよ。

 

               おしまい

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