ものすごい台風が 雨と風を連れて来て たんぽぽ村をお掃除してくれた後に
それはそれは大きな虹の橋が うぐいす谷からたんぽぽ村にかかってね
その 虹の橋から あわてんぼ天使が落っこちて来たことから このお話ははじまります
落っこちてお尻を痛く青くした天使は 頭は打ってなかったんだけど「おばか」だったの。
おまけに、ひとりじゃなくて次から次から 天から降って来て、そりゃあもう大騒ぎ!
背中の羽を忘れて飛ぼうとして落ちっちゃった天使とか、虹の滑り台から落ちたとか 虹の裏
側をのぞいてみんなで落ちちゃったとかね
さぞかし大変なことかと思うでしょう?
ところがね、みーんなおばかちゃんばかりだから、痛いお尻をなでなでしながら大笑いして
元気いっぱい!
誰かが「ここは地上だから、もう 落ちる心配がなくなった!」って言えば、「そーだ!」
「そーだ」と納得し、「だから 羽根を忘れても走り回れる」と大喜びするし、
頭の輪っかは、とっくの昔になくしているし・・・・
お空では見たこともないようなきれいな花や、素敵な虫さんがいっぱいいるので
すっかり たんぽぽ村が気に入ったようです。
ある天使は、しくしく泣く声を聞いて、そこにあるキレイな水溜まりをのぞいてみました。
映っていたのは 自分の顔です
「泣いているのは、水溜りさんなの?」
映っている天使の姿が、少し揺れました。
「何がそんなに悲しいの?」
すると、水溜りさんが言いました
「一生懸命努力したって、駄目なんだよ」
「努力したの?すごいね」天使は、努力したと聞いただけで水溜りさんを尊敬しちゃいそうでした。
「すごくないよ。駄目だったんだからね」
それから少し考えて、ゆっくり続きを話し出しました。
この天使は悪い奴ではなさそうだと、安心したからです
「本当は、僕、天に昇りたかったんだ。それが夢だったの。だから、熱い太陽の光にもじっと耐えて、
ゆっくり、ゆっくり、身体をすり減らして空へ向かって行ったんだ。
小さな、小さな水の粒になってね・・・・。長い旅だった・・・。
でも やっと雲になれたと思ったら もう、いつの間にかここにいたんだ!」
天使は嬉しそうに言いました
「じゃあ、あなたも空から落ちてきたの?私もさっきおちてきたんだよ!」
「ずいぶん嬉しそうに言うじゃないか」
「だって、こんな世界もあったって、落ちてみて初めてわかったの。花も小鳥もすべてが
初めて出会ったお友達なの」
「そういえば ここは やけにあたたかいところだね。僕は最初 氷の浮かぶ冷たい海にいたんだ」
「すごい!空にのぼって また違う場所を旅しているのね!」
水溜りは 急に嬉しくなりました。気がつけば、ここは 鳥が時々のぞきに来たり、
花が優しい香りを送ってくれたりと、前にいたところより賑やかで淋しくないなとわかったのです。
それに、今度は前より早くお空にのぼれそうです。
「行ったり来たりしながら、いろんな出会いが僕を待ってるってことだね。キミと出会えてよかった。
僕は自分の役割と幸せを見失うところだったよ。」水たまりは少し照れながら言いました。
おばかの天使は、なんだかよくわからないけど、嬉しくしあわせになりました。
違う天使にも 違う出会いがありました
ブツブツ文句を言ってるお花との出会いです
このお花は もう少しで枯れるところだったと怒っています。
しかも妹は つぼみのまま 雨と風に散らされてしまったのだとも・・・・
「たんぽぽ村は 優しい太陽がいつもニコニコしてる場所だって聞いてたから、楽しみに咲いたのに、
私が咲く頃は一度もそんな太陽を見られなかったの。いつも、いつも寒い日々!太陽って、なんて
気まぐれで不公平なの!」
あんまり花が怒っているので、天使はおそるおそる言いました。
「太陽はね、いつも、いつも、毎日、毎日ニコニコ微笑んでいるよ。だけど時々、お空を移動する雷さ
んの自家用車や、業務用の大きな雨雲が通りかかると隠れて見えなくなっちゃうんだ。それでも
太陽はいつもニコニコそこにいるんだよ。信じられないかもしれないけどね」そう言いながら、花に影
を落としとぃた大きな岩を「うんしょ」と 退かせてあげました。
すると、太陽の光がにっこりと花に降り注ぎ、花は手足を気持ちよさそうにぐ~んとひろげて大きく
伸びをしました。
そして、ちょっと、顔を赤くして「ありがとう」と、言いました。
いろんなおばか天使が、いろんな出会いをして口々に言いました。
「この たんぽぽ村は楽しいね」
「たんぽぽ村の住人は優しいね」
「この村に来れてうれしいわ」
すると、たんぽぽ村のみんなも言いました。
「あなたが来たから楽しくなったの!」
「あなたの笑顔と、笑い声で元気になれたの!」
「あなたがいるから たんぽぽ村は明るい村なの」
誰もかれもが大切で必要な存在
うれしくって、笑い出しちゃう村、それが、たんぽぽ村です。
そこにいる陽気なおばかちゃんが、虹のおばか天使たちです。
空の虹に腰掛けたり、地上を走り回ったり、誰かの話を真剣にきいていたり、
余計なおせっかいや、いたずらをして、反省したり、忘れたり・・・
だけど、「おばか」って、言われるとほっぺが自然にゆるんじゃうから見分けるのは簡単です。
おばかじゃないふりをしている天使もいるけれど、よーくみたら、きっとわかると思います。
遊びに来たくなった時は うぐいす谷のすぐそばの小さな小さな村だから、通りすぎないように気を
つけて。
それに、「おばか」は、うつりやすいので きっとあなたも「おばか」になっちゃうけど・・・・
それはそれで・・・・・いいよね?
おしまい